本と雑誌 20冊 『有吉佐和子著 「紀ノ川」』 [本と雑誌]

隊長が読んだ「本と雑誌[本]」を紹介するシリーズの第20回は、『有吉佐和子著 「紀ノ川」』をお送りします。

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この本は、紀州和歌山の素封家を舞台に、明治生まれの花、娘の文緒、孫で戦後世代の華子の明治・大正・昭和三大の女たちの系譜をたどった、有吉佐和子の年代的長編小説です。


小説「紀ノ川」は、1959年に中央公論社より単行本として出版されていますが、隊長が読んだのは新潮文庫版です。


書名と著者は知っていても、読んだことのなかった小説を手に取ったのは、今年10月に和歌山県伊都郡九度山町(くどやまちょう)の「慈尊院(じそんいん)」を訪れた時に安産、授乳、育児を願う布製の乳型が奉納されていて⇒ http://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/fe4e9d7372fb648bec727b24021a89b9「紀ノ川」にも描写されていると知ったからです。


1931年生まれの有吉佐和子さんは、和歌山県和歌山市出身で、東京女子大学を卒業し、「華岡青洲の妻」「恍惚の人」「香華(こうげ)」⇒ http://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/8e48b8ccd260602a72fbf4f3b4496846 などの著書があります。

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「紀ノ川」では、戦前・戦後の和歌山市の様子が描かれていたり、文緒と華子が東京女子大に進学する設定など、有吉佐和子さんの自伝的小説にもなっていると思いました。


特に印象に残ったのは、花が嫁入り前に母親の豊乃(とよの)と、慈尊院を訪れた時「廟の前の柱にぶら下がっている数々の乳房形(ちちがた)に気がつくと、しばらく瞑目することを忘れていた。中央を乳首のように絞りあげたもの」と書かれています。


まさに、10月に慈尊院で見た光景が瞼に浮かびました。


また、花が里帰りした時に見た、「このあたりは富有(ふゆ)柿の名産地である。甘く濃い味の、大きな柿の実が、黒い枝にまっ赤に色づいていた」も、隊長が見た光景と同じでした。


文緒の東京での結婚式の帰り、花が和歌山に帰る道中「数多くの川を渡ったが、どの川も色に深みも美しさもなく」「紀ノ川ほど美(う)っつい川はございませんよし」と語らせています。


小説の中で、ここまでに何回となく、紀ノ川の美しさが語られてきていましたが、この花の言葉にその美しさが凝縮されていると感じました。


インドネシアのジャバで育った孫の華子が、桜を見ても感動しなかった時に花が感じた「熱帯の花を見慣れた華子の眼には、早咲きの白っぽい桜の花は何か弱々しく映って」との表現には、隊長自身も新しい発見をした思いがしました。


「紀ノ川」は、1966年に映画化されていますが、花を演じたのが司葉子、文緒役が岩下志麻とのことです。この映画も一度観てみたくなりました。


===「本と雑誌」バックナンバー ===
http://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/c/dc30502bb229b843454e38b8994f9be0

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ナツパパ

ご無沙汰しました。
有吉さんの本は好きでした。
by ナツパパ (2016-11-23 08:27) 

隊長

ナツパパさん
今回「紀ノ川」を読んで、有吉さんの他の作品も読みたくなりました。
by 隊長 (2016-11-23 12:51) 

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