本と雑誌 28冊 『田原著 「水の彼方~Double Mono~」』 [本と雑誌]

隊長が読んだ「本と雑誌 [本]」を紹介するシリーズの第28回は、『田原著水の彼方~Double Mono~をお送りします。

41CCK2ceZfL.jpg


 「水の彼方~Double Mono~」は、中国の歌手・女優・小説家 田原(ティエン・ユエン)の小説「双生水莽」の邦訳本です。


彼女は、「アジアの歌姫」⇒ http://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/f3cf9a0ed4a0b71269d4867dfd3b946f で、紹介しています。


1985年3月30日生まれ、湖北省武漢市出身の田原(Tián Yuán)は、2001年6月、16歳の時に、ロックバンド「跳房子(Hopscotch)」のメインボーカリスト[カラオケ]としてデビューしました。


2002年に、初めての小説「斑馬森林」を出版しました。


2004年には、『蝴蝶 羽化する官能』で映画初出演し、第24回香港電影金像奨で最優秀新人賞を獲得するなど、マルチな活躍をしています。


2007年、北京語言文化大学英語学科卒業の才女でもあります。


2007年に出版された「双生水莽」は、台湾、フランスでも出版され、高い評価を得ています。


訳者の泉 京鹿(いずみ・きょうか)は、1971年東京生まれ。フェリス女学院大学文学部卒業。北京大学留学、博報堂北京事務所勤務などを経て現在に至ります。


原題の「双生水莽」とは、双子の水莽(すいぼう)のこと。水莽とは、毒草。誤って食べると、死んで水莽鬼になると言われています。


物語の主人公 陳言(チェン・イエン)は、武漢の進学校に通う女子高生で、北京の大学に進学します。


田原の経歴と重なるところがあることから、自伝小説とも取られがちですが、自伝とは片付けられない、美しくて残酷な幻想的青春小説になっています。


陳言の前に突然白昼夢となって現れる幼い頃の記憶、幼馴染、友人、初恋、暴力、家族問題、性、青春小説の全ての要素が凝縮されています。


また、当時の中国の若者が、いかに西洋文化の影響を受けていたかが、この小説から垣間見えます。


例えば、陳言と女友達が武漢を流れる長江のほとり⇒ http://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/44452eafaae24c5c58986299799dee11 に行き、モーターボートが映画「タイタニック」の主題歌を流しながら、川面を徘徊しているのを眺めています。


二人が「また船が沈むよ!」と、モーターボートに向かってわめくシーン、など。


陳言が小学校のころ、幼馴染の程克(チェン・クー)に連れられて河原のローラースケートリンクに行くシーンは、当時の武漢の子供たちの様子が丹念に描写されています。


この小説で初めて知ったのが、武漢にも租界があったことです。二度も武漢を訪れながら、知らなかった自分を恥じています。


この物語の主人公は、陳言ですが、影の主人公は、彼女の夢に度々登場する“象魚”です。


読んでいて、象魚とはどんな魚かわからなかったのですが、陳言の父親が「アマゾン流域が原産で長江流域でよく見られる魚」だと説明しているのを読み、世界最大の淡水魚“ピラルクー”⇒ http://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/d476fb6d6339925518b365bc420edd64 のことだと分かりました。


この小説を読み終わって、映画化してもよい作品だと思いました。10年前でしたら、田原の主演で上映したらヒットしていたでしょうね。


尚、「水の彼方~Double Mono~」の発行は、株式会社講談社、定価は1,600円(税別)です。


===「本と雑誌」バックナンバー ===
http://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/c/dc30502bb229b843454e38b8994f9be0

1~15冊  省略

16冊 2016/4/28 『絵本「世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ」』 http://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/29973ce102c830e434a3d5254a8a234c

17冊 2016/5/22 『小泉武夫監修 日本酒百味百題』 http://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/024f1e4cffac057d1640cfa975c60eea

18冊 2016/8/19 『清川虹子「恋して泣いて芝居して」』 http://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/7d376a06bdbc7339cdd9895dfa4e8e22

19冊 2016/10/22『四方田犬彦著「李香蘭と原節子」』 http://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/c480053b386de9398f64f43167273f0d

20冊 2016/11/22『有吉佐和子著「紀ノ川」』 http://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/504131fd665c00b7ee0e8f8b28dd1003

21冊 2016/12/7 『テレサ・テンが見た夢』 http://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/003c34225930ed81542e35caf5ec30fc

22冊 2016/12/22『カクテル・ハンドブック』 http://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/a1f052d9bc97050f8418a8e12a5f4849

23冊 2017/1/12 『高倉健著「少年時代」』 http://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/4243287003a72879856b54f7fd572ada

24冊 2017/2/9  『絵本「星の王子さま」』 http://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/10551068b08e5edb57b0be02773b31a1

25冊 2017/3/9  『瞳みのる 老虎再来』 http://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/4f839d9bbe229dc378239e5811877561

26冊 2017/3/19 『諺で考える日本人と中国人』 http://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/1f1dad80dfd1065eb243e2a08f6f25fc

27冊 2017/3/28 『地球の歩き方 中国』 http://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/bf64e21d7878240fce15b1470914ac6f


nice!(17)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 17

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。